写真右から:
●渡辺豪(わたなべ ごう)…原画展の会場となった遊郭・赤線専門書店「カストリ書房」の店主。全国の赤線跡をめぐり、失われつつある赤線の記録と魅力を伝える専門家のひとり。
●慶優(けいゆう)…漫画家。代表作は『てんぱいっ!』『シガーホリック』。『復讐の赤線』では、ネームから線画までを手描き原稿、一部着色をデジタルで行う。
●聞き手…鈴木愛美(すずき めぐみ、編集担当)
※()内は編集者の補足
―このイベントの目玉というか、「四角目の秘密、教えてあげるよ」ってことで……四角い目のアイデアはどうして生まれたんですか?
―このイベントの目玉というか、「四角目の秘密、教えてあげるよ」ってことで……四角い目のアイデアはどうして生まれたんですか?
イベントの告知バナー |
慶優:大した理由じゃないんですけど……そもそも杉山家の意地悪なキャラを比較的黒目が小さい、意地悪そうな顔にしてたんです。ただそうすると、驚いたりとか感情の起伏によって黒目が小さくなる漫画の表現が使えなくなるんで、どうしようかなと思って。
だったら感情が高まった時は「黒目を四角にする」というのはどうか、と思ってあのデザインが生まれました。
感情の起伏で四角くなる |
杉山家の血統だから四角くなるという訳ではなく、黒目が小さいキャラはそうしようかなと思ってます。
―もともと黒目が小さくて、これ以上小さくできないから四角くするようにしたんですね。書いてて楽しいキャラクターは誰ですか?
慶優:当初から俊人です。担当さんとも「俊人がいちばんキャラが立ってるね」って話しながら書いてて。長髪の頃から俊人は楽しく描いてました。
―逆に、描くのが大変なのは?
慶優:芳子(女将)ですね……あのタレントさんに似てるって(読者コメントで)よく言われるので、似せて描いていった方が喜んでもらえるとは思うんですけど……似せすぎると問題あるのかなと思って、どうしようかなって(笑)
……悩みますよね。
百合の園オーナー、橋本芳子 |
―あのキャラは「デラックスすぎる」とcomicoでもザワつかれちゃうので、あまり似せないでください……でも本当に似てますよね(笑)
渡辺:描く側でも、キャラクターが好きだったり嫌いだったりと別れるものなんですか?
―作画を担当して、『復讐の赤線』のストーリーはどう思いますか? 面白いですか?
慶優:復讐ものは初めてだったので……自分でも描こうと思ったことがなかったので、はじめは探り探りで描いてました。自分自身、漫画家としてなりはじめの時から女性キャラを描くことが多くて。編集の方から女性キャラを褒められることが多かったんですけど、男性キャラはいいねと言われたことがなかったので、今回は男性キャラを認めてもらえたのが嬉しかったですね。
今回の作品で、復讐もののストーリーは好きになりました。面白いなって。
―現実に置きかえてみて、スズランのような女の子はどう思いますか?
慶優:普通にいそうな感じの女の子で、好きですね。
―逆に、こいつは無理、とか理解できない、と思うキャラクターはいますか?
慶優:思考回路が理解できないように意識して描いているのは、やっぱり篤人です。朝や昼間のワイドショー番組などで、主婦の投稿を題材にした再現ドラマなんかも参考にして描いています。
そして長男の篤人 |
―つまり、篤人さんの中身のモデルは、いわゆる「モラハラ夫」なんですね
慶優:そうですね……。
―篤人さんの価値観の中に、(生みの親である)慶優先生の価値観は入ってないのでしょうか?
慶優:篤人さんとの共通点は、長男というところぐらいですね。
―そうですか。ところで本編は葉山先生のプロット(筋書き)にそって進んでいますが、ご自身が『復讐の赤線』で描いてみたいエピソードはありますか?
慶優:夢子視点とか蘭子視点のエピソードはそれぞれ作れそうかなと思ってますね。
―それ読みたいです。comicoでのストーリーはまだまだ続きますが、いずれスピンオフも描いていただきたいですね
娼婦たち。左から、夢子、スズラン(頼子)、蘭子、笑子、おさち |
―ところで、作品公開直後に読者コメントで反応が得られるcomicoのようなシステムは、初めてのご経験だと思いますが、どう感じられましたか?
慶優:まず、すぐにコメントついたのに驚いて。作品を否定するんじゃなく、楽しもうとしてくれてるって感じが嬉しかったですし。作品を楽しむ才能のある読者に恵まれたなって感じがありました。
―そうですね。漫画を読むだけじゃなくて、コメントを書いて楽しむ、他のユーザーさんのコメントを見てまた楽しむ、っていうところがcomico読者さんにはあります。
紙媒体とWeb媒体で連載経験のある慶優先生が、comicoの連載はここが特徴的だと感じる点は?
慶優:ライブに来てる感じがありますね。
―なるほど。確かに、つまんないと感じた方からそういうリアクションがくると、ちょっと頑張ろうって気になりますよね。だから赤線読者の方は、感じたことをそのままコメントとして書き込んでくださると、作品を盛り上げるという面ではプラスですので、ぜひよろしくお願いいたします
―あと、週刊で漫画を描くのは辛いですか?
慶優:辛いですね(笑)
もともと『コミックゼノン』という月刊誌で連載してて、その次はWeb媒体の『コミックぜにょん』で隔週連載になったんです。で、今は週刊連載をやっているので、どんどん締め切りのスパンが短くなったというか……
月刊だとネームのチェックって月1回なんですけど、comicoだとネームチェックが毎週あるので、そのぶん精神的なプレッシャーはあります。ネームがOKになって下書きに入る段階では、あとは描くだけなのでだいぶ気が楽になりますが……
―アシスタントは雇わないのですか?
慶優:雇いたいですけど……原稿料が決まってるので、そこは仕方ないかなと。
―そうですね……ちなみに今回の展示にあたって、原作者や漫画家、編集者の作業を1週間にあてはめてみたのですが、慶優先生には1日も休みがなく……
週刊連載作家さんは休みがなく本当に大変です |
―それでも楽しみにしてくださってる読者の方のために、休載しないよう総勢で進めています。完結まで休載なしを目指して頑張ってますので、皆様ぜひ応援よろしくお願いします!
渡辺:1週間分とか書き溜めたり、ストックは作らないのですか?
渡辺氏から当然の疑問が……ストック大事。 |
―書き溜めたら……放出してしまうんです。「今週は2話同時更新!」とか言って……
渡辺:それだと、体調の管理を万全にしないと……
―そうなんですよね……体調管理が大事ですよね。(慶優先生が)風邪ひいたらアウトですね
渡辺:漫画の環境はアナログとデジタルどっちなんですか?
―線画まではアナログですね。シャーペンで下書き、つけペンで線画まで描いてて。最近はかなりしんどいので、背景の一部は市販の素材を使おうかって話になってます
イケメンキャラを次々と生み出す慶優氏 |
―慶優先生に質問を戻します。慶優先生にとって復讐はアリですか? ナシですか?
慶優:復讐は、正攻法だったらアリかなって。昔、別の出版社で「君の描く男キャラはカッコよくないね」って言われたことがあるんですけど……今回の作品でそれは復讐になったかなと思ってます(笑)。
―(男キャラが大好評なので)復讐になりましたね!
じゃあ拳を使わない復讐だったら、ラップバトルとか、勝手に向こうが自殺するとか間接的なのもアリですか?
慶優:まあそうですね……復讐をやった方がいいかどうかはわかんないですけど、自分が後悔のないようにはしたいですね。
―過去の担当編集さんに「君の描く男キャラはカッコよくないね」と言われたけど、本作では「トッシーかわいい! 高塚さん素敵!」と読者さんが喜んでくれてるじゃないですか。それって正直、「ざまあ」って気持ちになったりしましたか?
慶優:まあ……はい。
―(笑)最後に、読者にメッセージをお願いします
慶優:あいにくの雨の中、足を運んでいただきありがとうございます。
今回、新キャラで篤人の婚約者を描いたんですけど、原画があるのでよかったら見ていってください。
あとは休載せずに更新頑張っていきますので、皆様よろしくお願いします。
―そうですね。新キャラの2人……藤原さんと、篤人の婚約者はこの先いっぱい活躍してくれそうなので、読者の皆様は楽しみに応援してくださると嬉しいです
―このたびは雨の中、イベントにご来場ありがとうございました
この後、サロン形式でリラックスムードの中、慶優氏のサイン会が行われました |
→トークイベント前半へ
「娼婦は人類最古の職業」カストリ書房・渡辺豪×慶優TSレポ Part01
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